■本研究の目的

  • 国立病院機構全体で、アメリカ褥瘡諮問委員会(NPUAP)深達度分類におけるⅢ度以上の褥瘡を対象に、
    以下の2点を明らかにしエビデンスを創生することを目的としています。
    1) ポケットを有する褥瘡において、ポケットの外科的切開が治癒を促進するか?
    2) 褥瘡部位の局所治療において、消毒処置の有無が治癒に影響するか?

■本研究の背景

  •  褥瘡対策は、近年NST、医療安全管理、感染対策などと共に、科や職種を越えた病院のベーシックな機能指標としてその重要性が注目されています。しかし一方、現場で日常的に当たり前に行われている種々の処置やケアの中で、いわゆるEBM的にはほとんどエビデンスを欠くものもまだ多いのが現状です。例えばポケットを有する褥瘡に対する切開処置、また褥瘡全般に対する洗浄・消毒処置など、ごく当たり前に行われる処置が、科学的エビデンスを欠くかもしくは有効性の見解の一致を見ていないというのは、驚くべきことと思います。この2点について、本研究では国立病院機構のネットワークを生かした大規模な追跡調査を行い、エビデンスを確立したいと考えております。

■研究の仮説

  • 本研究は具体的に以下の仮説を検証します。
    仮説① ポケット切開の有効性 
     「国病機構入院中(または通院中)のⅢ度以上の褥瘡でポケットを有する症例につき、
    ポケット切開を行った場合、ポケット切開を行わなかった場合と比べて、1ヵ月後には褥瘡はより改善するか?」(褥瘡の重症度の指標として、実際には『修正版DESIGN得点』を用います)仮説② 消毒・洗浄の有効性 
     「Ⅲ度以上の褥瘡で感染徴候を認める症例で、
    創の消毒薬による消毒を行った場合と、創の洗浄(生食、水道水などで)を行った場合とでは、1ヵ月後には褥瘡はどちらがより改善するか?」


■研究の対象・方法

  • ①対象
    国立病院機構中の研究参加施設に入院中もしくは外来通院中の患者で、
    Ⅲ度以上の褥瘡を有するものを基本的に全例を対象とします。
    但し、皮膚疾患やASOを原疾患にもつ場合、非典型的な部位に生じた褥瘡の場合、治療方針変更や得られるデータ項目が一定条件を満たさない場合(詳しくはプロトコールをご参照ください)には対象から除外されます。
     全例が仮説②のサンプルとなりますが、特にポケットを有する例では同時並行で
    仮説①のサンプルとしても解析に用います。
  • ②観察・入力項目
     追跡期間は1ヶ月です。以下の項目につき各施設担当者にWEB入力して頂きます。
    ・群分け指標:DESIGN(ポケット・感染の有無)、ポケット切開項目、洗浄・消毒入力項目
    ・追跡項目:DESIGN
    ・アウトカム指標:修正版DESIGN総点の減少
    ・その他:原疾患などの患者情報、使用薬剤、ドレッシング、ケアの情報
  • ③研究デザイン
    介入を伴わないいわゆる「前向きコホート研究」です。
    ポケット切開や消毒の有無といった治療方針は受け
    持ち医療者の方針で決定して頂き、治療群の割付
    をこちらでは指定しません。

■研究責任者