Y.N 先生 外科
今回NHO専修医海外留学制度を利用し、ロサンゼル
スのVeterans Affair West Los Angeles Medical
Center(以下VAと略す)へ2か月間留学する機会を
頂きました。この場を借りて留学中の経験をご報告させて頂きます。
VAは米軍関係者(多くは戦争へ赴いた兵士)に対
し、その労をねぎらう意味で医療制度を無償で提供す
る特別な施設です。なので患者層は中高年の男性がほ
とんどであり、その特殊な患者背景から多くの臨床研
究が行われています。
私の日本での専門は一般・消化器外科ですのでVA
では専ら外科に所属し、ほぼ毎日手術に参加させて頂
きました。アメリカは短期間の入院でも多額の医療費がかかるので、ほとんどの手術は日帰り手術です。手術はAttending(日本で言う主治医)、Resident、Intern or Medical studetの3人1セットで行いますので、VAでの私の立場はMedical studentと同格とされていました。
外科レジデントの毎日は朝6時からのroundから始まり、8時からの手術へと続きます。病院の特性上15時までに全手術を終わらせなければならず、すべての業務が日本よりも数時間早く始まります。
手術は主にgeneral surgery, colo-rectal surgery, vascular surgeryに参加しましたが、時間のある時は日本では見る機会のないplastic surgeryやurologyにも参加させてもらいました。基本的な手術手技には目を見張るほどの差はありませんでしたが、各Attendingのちょっとしたテクニックなどは取り入れられるものもありましたので、機会をみて少しずつチャレンジしようと思います。
研修はVAだけにとどまらず、Down townにあるVA clinicへ見学に行ったり、毎週水曜日の朝に行われるUCLA morning lectureへも参加しました。UCLAでのlectureで印象的だったのは、medical studentやintern, residentに対する教育に関してです。日々の臨床でもそうですが、とにかく教え方が上手く、つねにdiscussionをしています。UCLAのProffesor Dianeとお話しした際に「教育で重要なのは、教える相手のレベルに合わせる事と、決して怒らないことである。」と言われた言葉が印象に残りました。日本では少し背伸びしてtaskをこなすことが望まれる傾向がありますが、アメリカでは事故の元であると考えられるようです。与えるtaskのレベルを設定する事も指導医の大事な役割と改めて考えさせられました。
また、日本で試行事業として開始された特定看護師(仮称)に関連して、VAに在籍するNurse Practitioner(NP)やPhysician Assistant(PA)の仕事ぶりを目の当りにし、特定看護師の未来がおぼろげに感じられた印象があります。当院は特定看護師の教育施設にもなっていますが、まだまだ改善の余地がありそうです。アメリカでのこの制度が確立するまでに数十年かかっているようですので、pioneerの一員としてお手伝いできればと考えています。
あっというまの2か月間でしたが、アメリカ医療を見られたこと、異国文化で生活できたことは一人の人間としての幅を大きく広げれたと思います。このような経験は望んでもできない事が多いので、チャンスがあれば是非参加して頂きたいと思います。最後に、2か月もの留守を許していただいた、松本院長を始め外科スタッフの皆様に感謝致します。
登録日: 2013年9月26日 / 更新日: 2013年10月3日