H.Y 先生 呼吸器科
私は2カ月弱のVA研修の中でPalliative
care、Oncology/Hematology、GIを
ローテートした。主にそれぞれの科の
fellowやattending doctorについて回る形
であり、アメリカの医師の働き方を直にみ
ることができるいい機会であった。
他の一般病院では1週間程度の海外研修制
度を設けているところもあるようだが、
NHOの研修制度は約2カ月と長期間であり
複数の科を見学することができるため、よ
り多くのシチュエーションに遭遇でき、日本の医療との違いを数多く知ることができた。また長期間滞在し研修先の医師たちと打ち解けることでかなり踏み入った質問もでき、非常に興味深い研修となった。さらに、大学病院の留学では基礎研究をすることが一般的だが、NHOの研修プログラムは臨床をみることができるというのが大きな利点だと思った。
各科によってもちろん業務内容は異なっていたが、どの科にも共通して言えることは、VAの医師はQOLがかなり保たれているということであった。アメリカ人は仕事と余暇、onとoffの使い分けが非常にはっきりしていた。VAのfellowたちと同じ生活をしてみると、自分を含め日本の若手医師は疲弊した生活をしているように感じた。またアメリカの医師の給料、勤務時間は日本とは全く異なっており驚いた。医療の質に関しては医療制度が全く違うためどちらが絶対的にいいかといことはいえないが、GIの手技に関しては日本の方が優れている印象を受けた。ただ今回の留学で私が学ぶべきことは、より厳格にEBMに基づいた医療をすべきであるという点である。VAではAttending doctorもfellowも統計的な数字に非常に詳しく、またガイドラインや新しい論文にも精通している様に感じた。それらのデータに基づいた必要最小限かつ最良の医療を提供しようとしているように見受けられ、医療費に関してアメリカと同様に深刻な問題を抱えている日本が見習うべき点ではないかと感じた。
私は渡航前、アメリカの医療制度について全く知らなかったため、自分がどの科を選択すると自分の専門であるGIに役立つ研修が送れるのかよくわからなかった。VAではPrimary careがほとんどの患者の主治医となり、各科は基本的にコンサルトを受けるだけの科ということを知らなかった。そのため一人の患者の経過を長い期間followすることはできなかった。またGIに関して言えば、肝疾患の治療であるRFAやTACEがアメリカでは放射線科の手技であることを知らなかった。今思えば、GIの他にPrimary careとRadiologyを回ればよかったという思いもある。さらにいうと、研修中は医療行為を行えず、基本的にみているだけというのは正直言って辛かった。非常に困難なことではあるが、アメリカでの医師免許を取得してから研修に参加すればより研修を楽しめるのではないかと感じている。
私たちの研修を受け入れてくれる現場の医師たちはこの研修のことをあまり知らされていない様で、戸惑いも感じられた。そのため出会った医師たちに逐一この研修プログラムについて自分で説明しなければならないのは大変であった。またセキュリティの問題でカルテを見る権限を与えられておらず、回診前に自分で情報収集することができなかったため、個々の患者の詳しい治療経過を知ることはできなかった。検査オーダーを入れたり、カルテを書いたりできなくても、カルテを見るだけでも権限を与えていただけたらよりよい研修になると思った。
登録日: 2013年9月25日 / 更新日: 2013年9月25日