人事院総裁賞 職域部門受賞
職 域 部 門 受 賞
独立行政法人国立病院機構
熊本医療センター 救命救急センター
(院長 池井 聰 以下81名)
平成20年12月10日、熊本医療センター救命救急センター〔院長 池井 聰〕(熊本県熊本市)が人事院総裁賞を受賞いたしました。
(顕彰理由):人事院公表資料より
近年、各医療機関において救急患者の受け入れを断るケースが増加するなど、救急患者の受け入れ拒否が問題となっているが、独立行政法人国立病院機構熊本医療センターの運営方針は、「何時でも、何でも断らない救急医療、全診療科受け入れ」であり、24時間・365日体制で、全職員で全身全霊の努力をもって日夜救急患者の受入を行っている。
その結果、熊本県内においては、病院から受け入れを断られ続け搬送中に患者が死亡したという事例は防がれている。
当院における救急医療の開始当初(平成6年)は、専任医師2名で、現在の院長が当時の救急医療の責任者であった(現在は専任医師8名)。救命救急患者の受け入れについての院内の理解が得られない状況であったが、地域の医療を確保するためには、救急医療が必要不可欠であるという信念の基、責任感と努力により限られた人数で救急患者の受け入れを行った。
その間、院内の理解を得るため根気強く説得を重ね協力体制を築くほか、地域の300程度の開業医を訪問し救急医療を始めたことを説明するとともに、救急隊員の信頼が得られるよう救急患者の受け入れに対応した。
その結果、年間100台にも満たなかった救急車の受入台数は、平成14年度には約4,300台となり、平成19年度には7,800台を超え、他の医療機関と比べても突出するようになった(国立病院機構内での救急車の受け入れ台数はトップ)。
当院の方針が「受け入れを拒否しない」ということから、救急隊が病院選定で苦労する様な、酔った患者やホームレスの患者等についても、暖かい救急医療を提供している。大声で医師に罵声を浴びせる患者や、診察時に暴れる患者も多いため、警察官を呼ぶことも多々ある。その他、精神疾患を有する患者で身体疾病で入院を必要とする患者も多数受入れており(年間約2,000例)、診察時に暴れたりする場合がある。このような状況下においても、スタッフがフォローしあい、先輩医師が指導し、また他の部署とも連携をとりつつ病院全体で救急医療を支えている(当院は熊本城内にあり、熊本の繁華街に近いため、酔ってけんかをした患者等も多く搬送される)。
当院は、心臓疾患に対応できる特殊大型救急車(普通救急車の2倍の広さがあり、複数の生命維持装置を搭載し、重症循環器疾患患者を搬送するための特殊車両)を所有し、他の医療機関の要請がある場合は、何時でも、どこでも医師、看護師が同乗し、救急患者の受け入れを行う体制をとっている(国立病院機構の救命救急センターで特殊大型救急車を所有しているのは当院のみ)。
その他、事故現場に出動し崖下にロープで降りて治療を行ったり、ビルから飛び降りようとしている精神疾患患者の説得に駆けつけたりするなど、極めて意義の高い現場救命活動も行っている。また、日本D-MAT隊を2組擁し、災害医療へも貢献している。
また、救急医療の向上を図るため、救急救命士に対する就業前病院実習、気管挿管・薬剤投与実習の受け入れを積極的に行うほか、当院職員と開業医や救急隊員との間で、救急患者の通報から医療機関での治療までの一連の行為に関する症例を検討するための「救急症例検討会」(通算93回)を定期的に実施している。
これにより、疾患等に対する救急隊員の適切な情報の収集能力(医師への適切な情報伝達)や疾病等に対する適切な対応能力が養われている。さらに、地域の開業医や救急隊員とのコミュニケーションが図られ、救急患者の受け入れがスムーズになっている。
一方、資質の向上のため、研究(厚生労働科学研究、循環器病研究委託、国立病院機構共同研究等)、学会発表(年間約30編)、講演及び論文(年間約5編)の報告を積極的に行っており、その数は特に多く、非常に高い評価も受けている。また、熊本県内における救急医療講演等は、医療従事者の資質の向上のために当院が中心となって積極的に行っている。熊本市消防局とのモバイルテレメディシン実用化の共同研究は、国立循環器病センターの指導による世界初の試みである。
このように、当センターは、救急・救命医療の確保に大きく貢献し、国民に大きな安心感を与え、さらには救急に従事する救急救命士や消防隊員の資質の向上にも貢献しており、公務の信頼の確保と向上に寄与している。
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登録日: 2007年8月8日 / 更新日: 2010年8月16日