個   人  部  門  受  賞  
独立行政法人国立病院機構
福岡病院長 西間三馨(にしま さんけい)

 

平成20年12月10日、福岡病院(福岡県福岡市)西間三馨院長が人事院総裁賞を受賞いたしました。

 

(顕彰理由):人事院公表資料より

  国立病院機構福岡病院長である西間三馨氏は、九州大学病院入局後、喘息により多くの子供の命が失われていた状況を目の当たりにし、喘息治療を通じて子供の人生を豊かにしたいと願い、昭和48年に国立療養所南福岡病院(現、福岡病院)に移り、直ちに呼吸器疾患・アレルギー疾患に特化した小児呼吸器科を創設し、以来、一貫して小児医療の向上に積極的に取り組んできた。

 当時、喘息をはじめ小児慢性疾患患者は、多くが長期の入院生活を余儀なくされるため、就学が困難になり、日常生活や成長過程で習得すべき社会性の減少や、患者自身の将来に対する不安など、疾病から派生する多くの問題を抱えていた。また、その家族の精神的・肉体的負担は重く、疲弊する家族をも支えながらの治療であった。氏はこの状況を改善するため、疾病治療のみならず、病気を媒介として小児の成長・発達に寄与できる「優しく暖かで、かつ良質な組織作り」を目指し、家族に対する支援、教育の保障を含めたトータルケア、及びそれを可能とする小児専門医療スタッフ及び看護師の育成に永年に亘り貢献し、多くの実績を残した。

◎サマーキャンプ 診察風景(昭和の時代)

 昭和48年に治療を続けながら学習を行う「病弱児教育」を開始し、昭和49年には喘息児の自己管理による日常生活での対処法とその習慣づけや自発性・積極性の回復を目的とし、喘息児に「喘息で苦しんでいるのは自分一人ではなく、こんなに多くの友達が同じように苦しんでいる。しかし、一生懸命に頑張って喘息を克服しようとしているのだ」と一緒に打ち克とうという気持ちを持たせるため、「喘息児サマーキャンプ」を直接担当、指揮し、その後も発展させ、今年で第38回を数え、全国で最大規模・最長となり、患者・家族・多くの関係者から絶賛を博している。

◎水泳教室
 
 昭和52年には埃の少ない水の中での環境、水力を利用した無理のない全身運動、皮膚を鍛え身体の抵抗力を培い、正しい呼吸法を学ぶ「喘息児水泳教室」を、氏が市役所や市民の協力を得て市民プールで毎週1回開設した。その顕著な治療効果が認められた6年後には、この治療法の拡大・推進と患者の負担軽減を図るため、氏が意欲的に厚生省へ働きかけた結果、病院内に室内温水プールが設置され、多くの患者・家族からの信頼を集め、治療の充実・向上を図った。
 氏の喘息治療分野での貢献は、外来患者数として顕著に表れており、昭和48年に80名だった喘息患者は、5年後には1,300名、10年後には2,200名、20年後(平成5年)には4,000名、現在は5,000名となっている(氏の下には多くの小児科医師が集まり医師不足の状況はない)。

◎ガイドライン


 近年は他のアレルギー疾患も増加し、小児呼吸器科の疾患は多様化・複雑化の傾向を強めているが、アレルギー疾患の治療は、発症した症状により担当する診療科が多岐に亘るため、各々の専門分野での診療を越えた、広汎で円滑な連携が必要とされていた状況下で、氏はアレルギー疾患の治療水準の向上と均てん化を目指し、平成12年に世界初の小児に特化した画期的な「喘息治療ガイドライン」の発刊として結実した。

 一例として喘息死亡者数をガイドライン発刊以前の平成9年と平成19年で比較すると、総数では5,661名から2,533名と半数以下に激減する等、喘息死のみならず、発作入院数、長期入院患者数の著減という顕著な治療効果をもたらした功績は極めて大きい。このガイドラインは、以後、定期的に改訂・発展を続け、各々の専門分野間の広汎な医療連携を精力的に推し進め、最適な治療の提供に大きく貢献している。

◎参考
 ・病弱教育対象児童生徒数の推移      ・喘息重症度と学業成績

 一方、重症心身障害児(者)病棟では、閉鎖的印象が強く、家族以外の来訪者も希有であったが、氏はデイケアをはじめ、NICU(新生児集中治療室)から重症患者を積極的に受け入れるとともに、外部ボランティアについてもボランティアハウス等を用意したり「感謝の集い」を開催するなど、積極的に受け入れ、明るく外に開かれた病棟づくりを行い、平成13年には国立病院初の在宅重症児通園を開始し、平成18年には日本初の障害者自立支援法承認施設となり、障害者福祉の向上に努め、現在では、全国の重症心身障害児(者)施設の見本となり、県外からも多くの視察者を迎えるなど、明るく外に開かれた病棟を実現している。

 氏は院長になっても、週3回の外来診療を担い、患者との接点を常に持った病院運営を行い、現在では親から孫へ3代続くアレルギー患者を診るなどホームドクターの役割も果たしている。 このように氏は永きに亘って医療、教育ともに充実させ、その功績は極めて顕著であり、公務の信頼の確保と向上に寄与している。

 

※西間三馨院長は平成21年3月をもって福岡病院を定年退職されましたが、平成21年4月以降、週2回、同病院において外来診療を行っています。

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